亜麻色の髪の少女

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ゲームソフトの時限独占はゲーム業界にとって薬なのか毒なのか

先日、海外のゲーム系ニュースサイト「Wccftech」で以下の記事が公開されました。

 

wccftech.com

 

記事の内容を端的に言うと、「ソニーは有名な大型タイトルをPS5用にいくつか時限独占している」というものです。

この「時限独占」というのは、ソニーマイクロソフト任天堂といったゲーム機本体(ハード)を開発・販売する企業が、そのハードのゲームソフトを開発・販売する企業と契約を結び、自社ハードでのソフトの販売を先行させる、言い換えれば他社ハードでの同一ソフトの販売を遅らせるといったものです。これにより各ハード会社は自社のハードを他社のハードより優位に立たせることができ、販売を伸ばすことが見込めます。最近だと「Final Fantasy VII Remake(PS4)」が時限独占タイトルとして個人的に記憶に新しいですが、他にも特定のハードで先行して販売されるソフトは結構多かったりします。

 

この時限独占、ユーザーからするとあまり印象の良いものではありません。PS4ユーザーは早くそのソフトを体験できるのに、SwitchやXbox Oneユーザーは遊ぶことができない。さらに今のこのインターネット社会、SNSや動画配信サイトでそのソフトの感想やプレイ映像は簡単に目に入るためネタバレを完全に避けることは難しく、いざ自分の持っているハードでそのソフトが販売される頃にはもう購買意欲が失せているなんてこともざらです。先行販売されているハードを買えば当然早く遊ぶことができますし、時限独占を行う企業の目的はまさにそこにあるわけですが、そもそも時限独占などなければ他のハードでも早くに遊べていたものを『制限』して他のハードを買わせるというこの形態はとてもユーザー思いのものとは言えません。また、後から他のハードで販売されることを隠し、あたかも永久独占タイトルであるかのように販売する手法もちらほらと見られ、こちらもユーザーの反感を買っています。先日「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S」のPS4版が公表されましたが、こちらも最初はSwitch独占かのように販売していたためかなり反感を買ってしまっています(実際任天堂が時限独占契約をしていたのかは不明であり、Switch版が好評だったためスクウェア・エニックスが後からPS4版を追加したという可能性もあります)。

 

では時限独占はユーザーにとって悪いことばかりなのかというと実はそうではありません。先述したとおり、時限独占は基本的にハード会社がソフト会社と契約を結ぶことで成立します。つまりここには金銭が発生します。ソフト会社はハード会社との時限独占契約によって得た資金を開発費等に回すことができ、結果としてより高品質なソフトの開発につながります。「DEATH STRANDING(PS4)」はソニーからの資金的な支援がなければあれほど短期間にあれほどの高品質で世に出ることはなかったでしょう。

 

時限独占はゲーム業界にとって薬なのか毒なのか。これは一概に薬である毒であると言うことはできません。しかし毒である側面を少し緩和する方法はあるのではないかと思います。例えば、「時限独占」という言葉を「資金提供」という言葉に変えるだけでも、ユーザーからの反感はそれほど大きくはならないのではないでしょうか。